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遺言の種類とその内容

遺言の方式と種類

 一般的には「普通方式」になります。「特別方式」は死が切迫しているなど特別な事情があって「普通方式」による遺言ができない場合に利用する、ごく限られたまれな場合です。「特別方式」は「普通方式」の遺言ができるようになって6ヶ月間生存した場合には自動的に効力が失われます。

【普通方式】

  

主 な 特 徴

自筆証書遺言
(じひつしょうしょ)

 遺言者が自分で筆をとり、遺言の全文・日付を自書し、署名、押印をすることによって作成する方法です。また押印は三文判でも有効ですが、トラブル防止の意味からも実印のほうが安心です。それぞれの要件は非常に厳格で、ワープロで作成したり、日付を年月日までが特定できるように記入しなかったり(例えば「平成15年7月吉日」は不可)した場合には無効なものとなってしまうので注意が必要です。筆記用具や用紙には特に制限はありません。なお、執行のため裁判所の検認が必要となります。

公正証書遺言
(こうせいしょうしょ)

 遺言者本人の口述に基づき、公証人が遺言書を作成する方法です。公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者および2人以上の証人に読み聞かせ、または閲覧させます。その筆記が正確なことを承認した後、遺言者・証人が各自署名・押印し、さらに公証人が方式に従って作成した旨を付記して作成されます。遺言書の原本を公証人が保管するという最も安全、確実な遺言書ですが、それなりの費用が必要となります。

秘密証書遺言
(ひみつしょうしょ)

 遺言の存在自体は明らかにしながら、その内容は秘密にして遺言書を作成する方法です。まず、遺言者が遺言書に署名・押印し、その遺言書を封じ、遺言書に押した印鑑で封印します。それを公証人1人および証人2人の前に提出して、自己の遺言書である旨および住所・氏名を申述します。さらに公証人がその日付および申述を封紙に記載した後、公証人・遺言者・証人が各自署名・押印することによって作成します。遺言書を封印してから公証人へ提出するので、内容を秘密にでき、自筆証書による遺言と比較して、変造される危険の少ない方法ですがその内容が不適格であるために結局無効となってしまうといった恐れもあります。なお、執行のため裁判所の検認が必要となります。

【特別方式】

.

主 な 特 徴

一般緊急時遺言

疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言する場合

難船危急時遺言

船舶遭難の場合において、船舶中にあって死亡の危急に迫った者が遺言する場合

伝染病隔離者遺言

伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所にある者が遺言をする場合

在船者遺言

船舶中にある者が遺言する場合

遺言書の条件

  自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
日付 必ず必要 必ず必要 必ず必要
署名 必ず必要 必ず必要 必ず必要
押印 必ず必要 必ず必要 必ず必要
書く人 本人 本人の口述を公証人が筆記する 誰でもよい
証人(立会人) いらない 証人二人以上 証人二人以上
家裁の検認 必要 いらない 必要
保管 本人または第三者 公証人が原本保管 本人または第三者
すぐつくれるか 簡単 公証人役場に出向く
(公証人の出張可)
公証人役場に出向く
(公証人の出張可)
誰にも知られずにすむか すむ 公証人・証人に内容を知られる 存在は知られるが内容は知られない
作成費用は かからない 公証人の手数料
証人への謝礼
公証人の手数料
証人への謝礼
隠匿・変造・紛失偽造のおそれ 危険がある なし 危険は少ない
内容が無効になるおそれ ある なし ある
 

 一番確実で安全なのは「公正証書遺言」でしょう。「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」はせっかく作っても条件不備のため無効になる可能性がありますので、弁護士に相談しながら作成することをおすすめします。又ビデオテープや録音による遺言は認められていません。

自筆証書遺言の注意点

 自筆証書遺言で一番大事な要件は、遺言の全文を自筆で書くことです。他人の代筆や、遺言者自ら作成したものであっても、それがワープロを使った場合などは無効になってしまいます。
 自筆証書遺言の良さは、遺言方式のなかで唯一、遺言の作成から保管まで、すべて自分一人だけですることができます。他人の関与もいりませんし、費用もかかりません。
 しかし、その分だけ紛失・偽造・変造のおそれがあるため、特にその方式は厳格な要件が求められます。財産が多数あるため、つい面倒だと、財産目録だけをワープロで作成した場合なども無効になってしまいます。
 こうした人は、自筆証書遺言ではなく、秘密証書遺言か公正証書遺言にしておくべき でしょう。

自筆証書遺言の作り方

(1) 用意するもの

用紙・筆記用具・印鑑・できれば封筒

(2) 遺言する内容を事前によく吟味・整理しておく

わかりやすい文章でかくこと。
必ず全文を自筆で書くこと

(3) 自筆で日付を入れる

日付は西暦でも元号でもよい
特定できる日でなければならない
■無効の例
「平成13年1月」「1999年1月吉日」「11月15日」など
■有効の例
「70歳の誕生日」「平成13年元旦」
日付は、遺言書が2つ出たときに、どちらが効力をもつかを決めるうえで、おおきな意味をもちます。
日付のない遺言、あっても自筆で書かれていない場合は無効になりますので注意してください。

(4) 氏名を自署する

自分の姓と名前の両方を自筆で書きます。
本文が自筆でも、氏名がゴム印などで押されたものであると無効です。
芸名 ・通称・ペンネームでも、遺言者の同一性がわかれば遺言としては有効とされます。
しかし、戸籍上の氏名にしておいた方が堅実です。

(5) 押印をする

必ず氏名の後に押印します。
この印は実印でなく認印でも有効です。
また指印でも有効とした判例もあります。
しかし、きわめて重要な文書ですから、実印を押すようにしてください。

自筆証書遺言書作成上の注意

 
書式

縦書きでも横書きでもよく、 特に法律に定めはありません。
「遺言書」とか「遺言状」などという標題は、特別つけなくてもかまいません。

用紙・筆記用具

用紙も特別定めはありません。便箋・原稿用紙など、字が書けるものなら何でも良いのですが、ある程度保存に耐える紙が望ましいでしょう。
筆記用具も、改ざんされるおそれがない、 筆・万年筆・ボールペンなど、何でもかまいません。鉛筆は望ましくありません。

文字

日本語でも外国語でも、旧仮名づかい・旧漢字・当て字でもかまいません. 判読可能であれば、文字の種類は問いません。しかし、正確に読みやすく書いておくべきです。
なお、金額・土地の地番など重要な数字は「壱、 弐、参・・・、拾」などの多角数字を使った方がよろしいでしょう。

封筒

封筒に入れて封印しておくようにしてください。
封印しておくと、遺言者の死亡後遺族は勝手に封を切れませんし、遺族は、家庭裁判所へ持参して、開封の手続きをとらなければなりません。遺言内容の変造を防止できますし、内容も秘密にできます。
封筒に入れず、むきだしのままでも有効ですが、トラブルのもとになります。

契印

遺言が一枚の用紙で終わらず、数枚になるときは、一枚ずつ契印(前後のページにわたって一つ印を押すこと)しておきます。

 

【自筆証書遺言見本(実物は自筆でなければなりません)】

遺言状

 

   遺言者織田博之は下記の通り遺言する。

 
  第一条

遺言者の長男織田孝明に第二条記載の不動産物件を除く遺言者の全財産を遺贈する。

  第二条

妹の相馬真紀には、次の土地と家を遺贈する。

(一) 

大阪府大阪市中京区丹波○丁目○番○号
宅地 九参・弐四平方メートル

(二) 

同所同番地
家屋番号 弐番
木造瓦葺平屋建居宅
床面積壱参八・五壱平方メートル

  第三条

遺言執行者として、大阪府大阪市東区○丁目○番地
弁護士石黒光一を指定する。

 

   平成十三年十月二十一日

     大阪府大阪市中京区丹波○丁目○番○号

 

                  織田博之   印

 

自筆証書遺言書加除訂正の注意

 自筆証書遺言は、内容を加除訂正する場合には、厳格なルールがあります。
 これは、遺言者がただ一人で作成から保管までおこなうことができ、偽造・変造の危険にさらされているからです。

【加除訂正の注意】

訂正箇所に二本線を引き、訂正前の字が読めるようにして、その上に訂正する字を書きます。

訂正箇所に押印する。この印は自署の後に押印した印と同じものでなければなりません。

遺言の末尾か変更場所の欄外に「拾行目五字目のあと参字加入」などと変更した場所を記し、その記載のあとに氏名を自署します。

加除訂正個所が多いときは、訂正印の押し忘れがあったり、紙面が汚れて読みにくくなりますので、書き直すようにしてください。

秘密証書遺言の作り方

 
(1) 遺言内容を記載した証書を作成する

ワープロなどで記載されたものでもよく、自筆でなくともかまいません。日付の記載は必ずしも必要ありませんが、入れておいた方がよろしいでしょう。内容の訂正は自筆証書遺言の場合と同じです。

(2) 書名・押印する

署名は必ずしなければなりません。印は実印でも認印でもかまいませんが実印の方がよろしいでしょう。

(3) 遺言証書を封筒に入れ封印する

封印は遺言に使用した印と必ず同じ印を使ってください。使用する封筒は特別なものではなく、市販されている封筒でもかまいません。

(4) 公証人に遺言の入った封筒を提出する
公証人に提出するときには、証人2人以上の立ち会いが必要です。
(5) 公証人が封紙を記載し、封筒に貼る

公証人は、受け取った日付と遺言者の氏名および住所を封紙に記載します。その封紙に遺言者と証人が署名します。その後その封紙を封筒に貼ることになります。

 

 秘密証書遺言は、公証人が遺言書を封印した後からの関与です。そのため、いかなる人にも中身を知られる心配はありません。公証人役場には、遺言をしたことだけが記録され、その内容の記録は一切残りません。
 ところが問題は、遺言の中身について公証人の検証を受けていないため、内容の有効無効の確認ができません。結果的には内容が無効になる可能性もあります。

 
【秘密証書遺言の封紙】
平成十五年第△△△号
秘密証書遺言
 
 遺言者織田博之は本職塚原浩一郎および証人 堤浩二、同桂祐一の面前にこの封書を提出し、これは自己の遺言であって、大阪府大阪市伏見区信楽○丁目○番○号稲葉浩一が筆記したことを申述した。
 平成十四年十一月十日
 当職役場において
大阪府大阪市東区七丁目○丁目○番○号
  大阪法務局所属  
  公証人 塚原 浩一郎
大阪府大阪市東区香里○丁目○番○号
  遺言者 織田 博之
 
 上の者を本職その氏名を知らず面識がないので、法定の印鑑証明書により人違いでないことを証明させた。
大阪府大阪市下京区芦原○丁目○番○号
  証人 堤 浩二
大阪府大阪市中島区三条○丁目○番○号
  証人 桂 祐一
 
公正証書遺言の作り方
(1) 遺言内容を整理する
相続財産の目録、配分内容を検討しておく。弁護士などと相談して内容を決めるとよろしいでしょう。
(2) 依頼する公証人役場を決めておく
料金は全国どこでも一律ですから、お近くの公証人役場を選んでください。
(3) 証人を決める
証人は2人以上。ただし、欠格者は証人になることはできません。
(4) 事前に公証人役場で打ち合わせをする
事前に資料をもって公証人役場を訪ね、遺言内容を打ち合わせしておくとスムーズにすすみます。正式な日時はその時に決めるようにします。
(5) 遺言内容を公証人に口述する
遺言者は口述し、公証人が筆記します。その場所に証人2人以上が立ち会います。事前打ち合わせをしっかりしておけば、公証人はあらかじめその内容を筆記しておいてくれます。
(6) 筆記された内容を確認する
公証人は内容を、遺言者・証人に読み聞かせます。
(7) 署名押印する
遺言者と証人は遺言に署名・押印します。この場合の印は、遺言者は実印、証人は認印でもよろしいです。最後に、公証人が署名押印します。なお、もし遺言者が署名できないときは、公証人がその旨を記載して署名に代えることができます。また、遺言者が病気などで公証人役場まで行くことができないときは、公証人が病院や自宅に出張してくれます。
【公正証書遺言の記載例
平成十五年第△△△号
遺産分割協議書
 
 本職は遺言者織田博之の嘱託により、証人 竹下晴夫 同桂祐一の立ち会いの上、下記の遺言の趣旨の口述を筆記しこの証書を作成する。
 
一、 遺言者織田博之は遺言者の所有する下記財産を遺言者の長男織田孝明に相続させる。
(一) 大阪府大阪市下京区芦原○丁目○番○号
宅地 参弐壱・四弐平方メートルの土地
(二) 同所同番地所在
家屋番号弐番
木造瓦葺平屋建居住
床面積 壱参八・弐六平方メートルの建物
(三) 関西新星銀行芦原駅前支店にある織田博之名義の定期預金および普通預金全額
(四) 大阪プロダクション株式会社の株式参拾五万株
 
二、 遺言者は、左記不動産を遺言者の次男織田隆司に相続させる。
大阪府大阪市中島区三条○丁目○番○号
宅地 弐四参・七九平方メートルの土地
 
三、 この遺言の執行者として、大阪府大阪市東区香里○丁目○番○号
弁護士 竹下晴夫を指定する。
大阪府大阪市下京区芦原○丁目○番○号
      無職 遺言者 織田博之
      大正 壱弐年六月六日生
 
下の者は、本職氏名を知らず面識がないので法定の印鑑証明書によりその人違いでないことを証明させた。
大阪府大阪市東区香里○丁目○番○号
      弁護士 証人  竹下晴夫
      昭和四参年八月七日生
大阪府大阪市千種区下町○丁目○番○号
      会社員 証人  桂祐一
      昭和五壱年参月八日生
 
上遺言者および証人に読み聞かせたところ、各自筆記の正確なことを承認し、下にそれぞれ署名捺印する。
遺言者 石塚 純一
証人 竹下 晴夫
証人 桂 祐一
 
この証書は、民法第九六九条第一号ないし第四号の方式により作成し、同条第五号に基づき、本職下に署名捺印する。
大阪府大阪市東区香里○丁目○番○号
 大阪法務局所属
  公証人 塚原 浩一郎
 

【証人・立会人になれない者】

欠 格 者

欠 格 理 由

未成年者

証人・立会人たり得る十分な能力がないため。法定代理人の同意を得ても、証人・立会人になることはできない。

禁治産者および準禁治産者

証人・立会人たり得る十分な能力がないため。

推定相続人・受遺者およびその配偶者ならびに直系血族

利害関係を有するため、証人・立会人には不適当。遺言者の配偶者や長男などは証人になれません。また、長男の嫁など、推定相続人の配偶者も欠格者とされます。

公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および雇人

公証人の勢力下にある者は、証人・立会人には不適当です。遺言者とはもちろん、公証人とも関係のない第三者でなければいけません。

 

 
 
 
 

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